「決まりました」の直後に、ひっくり返った商談
以前、こんな商談を見たことがあります。
営業マンが「決まりました!」と報告してきて、いよいよ注文書の説明に入った。ところが、その説明の途中でお客様がこう言い出したんです。
「やっぱり、その内容じゃ契約できません。少し考えさせてください」
商談は、そのままひっくり返りました。
なぜ、クロージングで「良いことだけ」を話してしまうのか
原因を探ってみると、答えはシンプルでした。
その営業マンは、見積もりの説明やクロージングの場面で、調子の良いことばかりを並べていたんです。お客様が前向きになる話は積極的にする。でも、注意事項やネガティブな条件については、ほとんど触れていませんでした。
だから、注文書の段階になって初めてその内容を伝えたとき、お客様は「そんな話、聞いていない」と感じてしまった。やられた、という感覚です。そうなれば、「それなら、やっぱりいい」となるのも当然です。
これは、営業マンの人間性の問題ではない
ここで大事なのは、この営業マンが不誠実だったとか、口が上手すぎたとか、そういう話ではないということです。
多くの営業マンは、悪気があって都合の良い話ばかりするわけではありません。「せっかく盛り上がっている商談の空気を壊したくない」「ネガティブな話は後回しにしたい」という、ごく自然な心理が働いているだけです。
問題は、その営業マン個人の資質ではなく、「いつ、何を伝えるか」が会社として決まっていなかったことにあります。
情報を出すタイミングが、標準化されていなかった
注意事項やネガティブな条件を、クロージングの時点で必ず伝える。これがルールとして決まっていれば、この商談は違う結果になっていたはずです。
でも、それが営業マン個人の判断とセンスに委ねられていた。だからこの営業マンは「今は言わなくていいか」と判断してしまった。そして、そのツケを、注文書の場面で払うことになったわけです。
「営業マンの問題」で終わらせると、何度でも起きる
この手の売り逃しを、「あの営業マンのやり方が悪かった」で終わらせてしまう会社は少なくありません。
でも、それでは根本的な解決になりません。同じことは、別の営業マンでも、別のお客様でも、また起こります。なぜなら、原因は個人ではなく、仕組みの不在にあるからです。
一人ひとりの営業マンに「うまくやってくれ」と期待し続ける経営は、いつまでも同じ売り逃しを繰り返します。そして、その売り逃しの数だけ、本来得られたはずの粗利が消えていきます。
経営者がやるべきことは、実はシンプル
この問題の解決策は、実はそれほど難しくありません。
「クロージングの時点で、何を、どの順番で伝えるか」を、会社としてマニュアルや台本に落とし込むことです。
- 良い条件だけでなく、注意事項もこのタイミングで必ず伝える
- 伝える順番、伝え方まで決めておく
- 新人でもベテランでも、同じ流れで商談を進められるようにする
これができていれば、営業マン個人の性格や経験値に関係なく、同じ結果を再現できます。逆に言えば、これがない限り、優秀な営業マンが偶然多かった年はうまくいき、そうでない年は売り逃しが増える、という不安定な経営がずっと続いてしまいます。
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