「経営を仕組み化する」という言葉には、少しズレがある
「経営を仕組み化する」という言葉をよく聞きます。ただ、正確に言うと、これは少し広すぎる表現だと思っています。実際に仕組み化すべきなのは、経営全体というより、販売の全体戦略、もっと言えば「営業」そのものです。
この解像度で捉えないと、経理を仕組み化すればいいのか、採用を仕組み化すればいいのか、話がぼやけてしまいます。
私自身の経験で言えば、利益に直結する仕組み化は、大きく2つの軸に整理できます。
軸1、成約率を上げる仕組み
一つ目は、成約率を上げるための仕組みです。目指すのは、トップ営業マン頼みの状態から、誰でも一定のレベルで売れる状態への転換です。
そのために欠かせないのが、次の5つです。
- 営業台本:何を、どの順番で伝えるかを言語化したもの。感覚に頼らず、誰が読んでも同じ流れで商談を進められる状態にします
- 営業補助ツール:トークだけでは伝わりにくい部分を補う資料や比較表。言葉で説明しきれない安心感を、視覚的に補います
- マインドセット:即決してもらう、今日決めていただくという前提を持って商談に臨む意識。この前提がないと、台本があっても押しの弱い商談になります
- ロープレ:台本を実際に自然に話せる状態にするための反復練習
- フィードバック:実践した結果を振り返り、改善につなげる仕組み
この5つがそろって初めて、成約率は特定の営業マンの才能に左右されない、会社としての実力になっていきます。
軸2、利益率を上げる仕組み
二つ目は、利益率を上げるための仕組みです。狙いは、1台あたりの粗利を、確実に上げていくことです。
こちらは、次のような要素で成り立っています。
- 値引き抑制のマインドとトークを、営業マン全員にインストールする:値引きに応じるかどうかを、個人の裁量に任せないようにします
- 値引きルールを厳格化する:どこまでなら例外を認めるのか、基準を明確にしておきます
- 付加価値を高めて、1台あたりの粗利を上げる:車の質、整備の質、保証の質、接客の質を高め、価格以外の価値で選んでもらえるようにします
- 集客の質を切り替える:価格の安さだけで来店を釣る集客から、興味と信頼がすでに高まった見込み客が集まる集客へと変えていきます
この2軸が、数字にどれだけ影響するか
例えば、成約率が30%から70%に上がり、1台あたりの粗利が15万円から30万円に上がったとします。同じ来店数、同じ商談件数だったとしても、成約する台数も、1台あたりの利益も、両方が底上げされるわけですから、月間の粗利は数倍単位で変わってきます。
これが、来店数を増やさなくても粗利が大きく変わる理由です。集客を強化して来店数を増やすには、広告費という追加コストがかかります。でも、成約率と利益率を上げることは、今の来店数のままでも実行できます。
経営者がまずやるべき、最初の一歩
「経営を仕組み化する」という大きな言葉に振り回されず、まずは、成約率と利益率、それぞれの軸で、今の会社に何が足りていないかを一つずつ確認することから始めてみてください。
- 営業台本は、実際に営業マン全員が暗記できる状態になっているか
- 値引きの可否は、個人の判断ではなく、会社のルールとして明文化されているか
- 商談後のフィードバックは、感想レベルではなく、次に活かせる具体的な内容になっているか
この棚卸しだけでも、次にやるべきことが見えてきます。逆に言えば、この2軸が仕組み化されないまま集客だけを強化しても、売り逃しと値引きがそのまま残り、忙しいだけで利益が積み上がらない状態からは抜け出せません。
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