びびってクロージングできない営業マンがいた
以前、気が弱くて優しい性格の、若い男性営業マンがいました。最初は、クロージングがうまくできない、というより、びびってクロージング自体をしたりしなかったり、という状態だったんです。
商談の最後の方になると、黙ってしまう。運よくお客様の方から「これでお願いするよ」と言ってもらえれば決まりますが、そうでなければ「じゃあ検討します」で終わってしまう。こういうパターンが続いていました。
苦手なのは「センス」ではなく「経験」だった
このタイプの営業マンを見ていて感じたのは、性格的にクロージングに向いていない、という話ではないということでした。単純に、クロージングという行為自体に、まだ慣れていないだけなんですよね。
だから、やったことは、性格を変えることじゃありません。中古車販売で即決してもらうために用意していた台本のトークを、徹底的に覚えてもらいました。
そして、繰り返しロープレをして、スラスラ話せるようになるまで練習させました。台本には「流れ」があるので、そのタイミングを外さないことも、あわせて意識させました。
振り返りとロープレを、地道に繰り返す
商談のたびに、振り返りとフィードバックをしました。うまくいかなかった部分を洗い出して、そこを重点的にロープレする。この繰り返しです。特別なことは、実はやっていません。地道な積み重ねです。
ここで大事なのは、ロープレの量です。1回や2回のロープレでは、この変化は起きません。毎日、決まった時間に、クロージングの場面だけを切り取って繰り返す。この量をこなすことで、初めて体に染み込んでいきます。
この営業マンの場合も、変化を感じ始めたのは、決して最初の週ではありませんでした。数週間、地道に繰り返した先に、少しずつ変わっていったんです。
もう一つ大事なのは、フィードバックの質です。ただ「良かった」「もう少し頑張ろう」で終わらせるのではなく、どの場面で、なぜ言葉が出なかったのか、次はどう言えばいいのかを、具体的に一緒に確認していく。この積み重ねが、単なる練習量以上の効果を生んでいたと感じています。
結果、堂々とクロージングできるようになった
その結果、この営業マンは、堂々と当たり前のようにクロージングできるようになりました。
面白いのは、その理由です。擬似的だとしても、ロープレで毎日クロージングをして、決めるという経験を積んでいくと、脳が「これで良いんだ」と認識するようになるんじゃないかと思っています。
脳は、本当の商談とロープレの区別が、実はあまりついていないんじゃないか。そう感じるくらい、変化がはっきりしていました。
だから、ロープレでクロージングして売れる、という経験を、できるだけたくさん積ませた方がいいというのが、自分の結論です。これは、間違いないと思っています。
経営者として、この事例から学べること
クロージングが苦手な営業マンを見て、「この子には営業は向いていない」と判断してしまう経営者は少なくありません。でも、この事例が示しているのは、苦手の正体は、性格ではなく経験不足だったということです。
台本を覚えさせ、ロープレを繰り返させ、商談ごとに振り返る。反論処理を丸投げしないのと同じように、このプロセスを地道に続けることで、性格を変えずに、成果は変えられます。
個人の資質で見切りをつけるのではなく、会社として練習の機会をどれだけ用意できるかが、その営業マンを戦力にできるかどうかを分けるんです。
こういう成長を見ていると、営業の才能があるかどうかより、練習の機会をどれだけ用意できるかの方が、よっぽど大事なんだと実感します。
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