こんにちは、車屋専門の採用コンサルタント野瀬貴士です。
今回はちょっと現場寄りの話をしたいと思います。
整備士の採用がうまくいかない…という相談は日々のようにいただくのですが、実はそれと同じくらい、「せっかく入ってくれた整備士が続かない」「辞めてしまった」という話もよく聞きます。
つまり、採用も大事だけど「定着」はもっと大事なんです。
私自身、長年自動車業界で働いていたことがあり、同じように整備士が辞めていく光景を何度も見てきました。
その時に現場の中にいて、毎日リアルに感じていたのが、「これはもう、仕組みが悪いな」と思うような離職の流れでした。
今日は、そのときの実体験も踏まえながら、「整備士が辞めないための働き方の仕組み」について、一緒に考えてみたいと思います。
ババ抜きみたいな整備工場の現場
私が働いていた会社では、常に整備士が足りていませんでした。
それ自体は別に珍しいことではありませんが、問題はその“構造”にありました。
まず、仕事ができる人間が昇進して工場長になります。ここまでは当たり前ですよね。
でも、そうなるとどうなるか。
工場長になると、現場で手を動かす時間が減ります。
代わりにマネジメント、クレーム対応、納期調整、人の尻ぬぐい……と、雑務が増えるだけでなく、無理難題なノルマをかせられ常にプレッシャーをかけられる…
でもその間、現場には人がいなくなってるわけです。
つまり、工場長が上に上がる=現場の戦力がひとつ抜けるという構図。
しかも、クレームや難しい案件の責任は最終的に工場長に降ってきます。
するとどうなるか?
そう、工場長が「こんな役割、やってられない」と言って辞めるか、平の整備士に戻して欲しいと懇願するすか、営業職へ逃げるんです。
「営業に異動させられた」のではなく、「営業に逃げた」が正しい。
これ、本当に多かったです。
「できる人」にしわ寄せがいく構造
じゃあ、工場長が抜けた後、どうなるか?
自然と、次に仕事ができる人にその負担がのしかかるんですね。
難しい作業、クレーム対応、急ぎの仕事。
できる人間ほど「抜けられない現場」の中心になってしまう。
でも、その人も人間です。
いつまでも自分だけが責任を背負わされるのはしんどい。だから、最終的にその人も辞めていく。
結果的に、残っているのはできない人間だけ。
また現場が回らない。納期が遅れる。クレームが増える。
長時間労働が常態化する。悪循環ですよね。
「辞めたくなる構造」が出来上がっている
結局、私がいた会社では、この流れの繰り返しでした。
しかも、それがあまりにも当たり前になっていたので、誰も疑問を持たない。
「できる人が辞めて、できない人が残る。」「残ってる人間で何とか回せ。」
でも、そんな状態で長く働きたいと思いますか?
当然、若手もすぐ辞めます。育ちません。せっかく採用しても、数ヶ月〜1年で辞めていく。
今では、整備士資格を持っていない外国人労働者に現場を任せている会社も少なくないですよね。
これではお客様の信頼を損ねてしまいます。
ですので、根本の仕組みを改善しないまま人を入れ替え続けても意味がないと思うんです。
できる人ほど辞める、独立していく現実
もうひとつ、現場の中で感じていたのが、「できる人ほど辞めていく」という現象。
なぜか? 理由は明確です。
・仕事が偏る
・責任が重くなる
・評価されない(給与に反映されない)
・将来が見えない
だったら、自分でやったほうがマシだ、ってなりますよね。
つまり、会社が辞めさせてるんです。
これは個人の性格とか努力ではなく、完全に「組織構造の問題」なんですよ。
働き方の仕組みを変えるしかない
じゃあどうすればいいのか。
私が考えるのは、以下の3つです。
1.マネジメント職と現場職を分ける
「工場長=全部やる人」になってないですか?
整備士として現場でバリバリやってた人が、突然、人・モノ・クレームの全部を見るのは無理があります。
なので、現場とマネジメントを切り分ける。
現場に集中できる「プレイヤー」と、全体を見る「マネージャー」の役割分担を明確にする。
そのうえで、工場長になっても現場に関われるような柔軟な仕組みを作る。
2.人事評価に「頑張ってる人が損をしない仕組み」を
現場では「文句も言わず、しっかりやる人」に仕事が集中します。
でも、評価制度が「年功序列」だったり、「頑張っても給料変わらない」だったら、やってられませんよね。
・生産性に応じた評価
・クレーム対応や難しい整備をこなしたことへの加点
・チーム貢献に対するインセンティブ
こういった頑張った人がちゃんと報われる評価の仕組みを整えることが、離職防止には不可欠です。
3.キャリアアップを明確にする
この会社に居続けたら、「自分はどうなるのか」が見えないと、若い整備士は不安になります。
なので、例えば、
・現場スペシャリストとして極める道
・教育担当や工場長としてマネジメントに進む道
・営業やフロントなど別ポジションへチャレンジする道
など、複数のキャリアアップを明確にしてあげることで、「長く働けそうだな」と思ってもらえる環境ができます。
辞めない会社にするために
整備士不足の原因を「外」に求めている会社は多いです。
でも、まずは「中」を整えるべきです。
- なぜ辞めるのか
- なぜ残らないのか
- なぜ若手が育たないのか
それらを現場のリアルな声から洗い出し、「仕組み」として変えていくこと。
それができて初めて、採用や定着もうまくいくようになります。
「採って、辞められて、また採って」のババ抜き状態を、そろそろ終わらせませんか?
もし、「うちの会社に合った離職防止の仕組みを一緒に考えてほしい」と思われたら、ぜひご相談ください。
現場のことをわかったうえで、現実的な制度設計を一緒に考えます。