こんにちは。車屋専門の採用コンサルタント、野瀬貴士です。
ここ最近、全国のカーディーラーからも「人が足りない」「技術者が定着しない」というご相談をよくいただきます。
特に整備部門では、
- 整備士が採れない
- 採れても若手がすぐ辞める
- ベテランに負荷が集中して疲弊する
- 工場長が現場を離れると一気に業務が回らない
- クレームが増える、入庫対応が遅れる
といった悩みが非常に多いです。
実際、国土交通省と厚生労働省の調査によると、2023年度の自動車整備士の有効求人倍率は「5.28倍」。(出展:厚生労働省 job tag)
これは全職種平均(1.31倍)の約4倍です。つまり、整備士を1人採るのに5社以上が取り合っている異常事態です。
こんな中で一度目を向けてほしいのが「シニア整備士の再活用」です。
これは、
「うちのディーラーにシニア?」と思うかもしれませんが
カーディーラーというと、メーカーのブランドや店舗のイメージもあるため、どうしても「若くて元気なスタッフで揃えたい」「ベテランよりフレッシュさを」と考えがちです。
でも現場はどうでしょう?
- 経験豊富な工場長が退職すると急にミスが増える。
- 新人の育成が追いつかず、中堅の負担が増える。
- 法定点検や車検業務が回らず、予約を断る。
- 営業がクレーム対応に追われ、売上に影響する。
このような現場の混乱は、「経験不足」や「人手不足」というよりも、戦力の構成ミスにあることが多いのです。
そしてその穴を最も自然に埋められるのが、すでに整備経験を持ち、現場を知っているシニア層なんです。
カーディーラーがシニアを活用する3つの理由
1.ブランド品質を守れる技術と経験
整備士としての技術はもちろん、接客、報告、チーム連携、メーカー対応までを知っているシニア整備士は、ブランドにふさわしい対応ができる数少ない人材です。
若手に教えるにしても、「ディーラーの整備とは何か」を言語化できるのは、やはり経験者だけです。
2.即戦力かつ支える力がある
新車の台数は減っても、顧客のメンテナンスニーズは増えています。
車検、点検、故障診断など「ただ整備ができる」以上の目利きが求められる仕事が多いですよね。
そこをサポートしてくれるのが、週2~3日の出勤でも十分に力を発揮してくれるシニア層。
若手を育てつつ、業務のボトルネックを防ぐ潤滑油のような存在になるのではないでしょうか。
3.若手との組み合わせで人材育成にもつながる
例えば、若手のそばにベテランを付けてセット運用することで、自然と育成が進みます。
顧客からも「ベテランがいる安心感」が生まれ、店舗への信頼感が上がるはずです。
そして、「学びながら働ける」環境は、若手の離職防止にも直結します。
シニア人材を活かす5つの導入手順
では、実際にカーディーラーがシニア整備士を活用するには、どうすればいいのでしょうか?
以下に5つの導入手順をご紹介します。
1.任せたい役割を明確にする
まずは、「何をやってもらうか」を決めましょう。
車検業務の補助なのか、若手指導・技術継承なのか、問診・初期診断だけなのか、工場内のチェック業務なのかなど、一人でなんでもではなく「限定された役割で最大の成果を出す」設計がポイントです。
2.勤務条件は無理のない範囲で設定
週5・フルタイムでガッツリ、は多くのシニアにとって負担です。
「週2~3」「午前中のみ」「繁忙期だけ」など、柔軟な働き方を前提に設計することが重要です。
シニア層が勤務することは、店舗のシフトに余白をつくるためにも、助かる人材になります。
3.給与・待遇は手応えを意識して設計
よくある失敗が、「時給1000円くらいで来てくれないかな」という軽いノリ。
これでは来てくれません。
シニア層が求めているのは、「安定」「感謝」「必要とされている実感」です。
金額よりも、「○○さんにしかできない仕事です」「おかげで若手が育ちました」などの承認の仕組みが大切です。
時給も最低でも過去の経験に見合った水準は意識しましょう。
4.社内の受け入れ体制をつくる
若手スタッフにとっては「急に年上の人が入ってくる」ことに戸惑いがあるかもしれません。
導入前に、「なぜ採用したのか」「どんな役割を期待しているのか」をチームに説明しておくと、スムーズに馴染みやすくなります。
5.再雇用制度やOB活用の仕組みを整備
すでに退職した元社員、関連整備工場で働いていた方などに、「再雇用・スポット雇用・契約社員」などの形で声をかけられる体制をつくるのもポイントです。
ハローワークではなく、社内ネットワークからの呼び戻しが最も成功率が高い傾向にあります。
カーディーラーだからこそ、ブランドを守れる人材を
整備士不足の今、どうしても「若手を採用する」ことばかりに目が行きがちですが、今すぐ戦力になるシニア整備士を部分的にでも活用することで、現場の安定度は大きく変わります。
- 品質を守る
- 若手を育てる
- 顧客の信頼を維持する
これらを同時に実現できるのが、実は「過去にディーラーを支えてきたシニア層」なのかもしれません。
「うちのディーラーに合う形ってどんなものだろう?」
「どうやったら採用出来るのだろうか…さっぱり分からない」
こんな疑問があれば、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。この記事が少しでもお役に立てばうれしいです。