こんにちは、車屋専門の採用コンサルタント野瀬貴士です。
近年、自動車整備業界では慢性的な人手不足が叫ばれており、とりわけ地方の中小整備工場では深刻な課題となっています。
そこで注目されているのが、外国人自動車整備士の採用です。
技能実習制度や特定技能制度の導入により、海外からの人材受け入れが制度的に可能となり、一部の企業ではすでに実績も出始めています。
しかし、受け入れ体制の整っていない中小企業が、安易に外国人整備士を採用することには大きなリスクが伴います。
そこでこの記事では、外国人採用における見落とされがちなデメリットを具体的に解説し、目の前の雇用に飛び付かないよう、慎重な判断をすべき理由をお伝えしたいと思います。
※この記事では、外国人の自動車整備士を否定しているわけではないことを先にお伝えしておきます。
紹介料やサポート費用など、予想以上に高額な初期コストに注意しよう!
外国人整備士を採用するには、現地の送り出し機関や日本国内の監理団体を通じて手続きを行うのが一般的です。
この際に発生する紹介料やサポート費用が非常に高額であることはあまり知られていません。
送り出し機関によっては、1人あたり30万〜70万円程度の紹介料が必要となる場合もあり、さらに通訳や生活支援を含む受け入れ体制の整備費用も加わります。
加えて、雇用契約書や技能実習計画の作成、ビザの取得、労務管理にかかる行政手続きも多く、専門家への依頼費用や書類作成の労力は馬鹿になりません。
これらを踏まえると、実際に外国人整備士が働き始めるまでに100万円以上の初期費用がかかるケースも少なくなく、採用コストが国内人材の数倍に膨らむこともあるのです。
実際、私のクライアントの社長さんに聞いたところ、ミャンマー人の整備士を1名採用するのに100万円はかかったと言っていました。
整備士不足は深刻ですが、かかる費用なども事前に知っておいた上で検討すべきです。
安易に飛びつくと思った以上の採用コストになってしまうので注意が必要です。
言語と文化の壁が現場での混乱の原因になることもあります
整備工場の現場は、チームワークと迅速なコミュニケーションが求められる環境です。
そこに日本語が十分に話せない外国人を加えると、言語の壁が業務効率を著しく低下させる可能性があります。
たとえば、工具の名称や整備工程に関する専門用語は日常会話とは異なり、外国人にとって理解が難しいものが多いです。
作業指示が伝わらなかったり、誤解によってトラブルや事故に発展することも考えられます。
また、文化の違いによって仕事観や責任感、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の意識にもギャップが生まれやすく、上司との関係構築が難航する場合もあります。
整備業界は安全・正確さが求められる職場であり、こうしたギャップが致命的な問題を引き起こすこともあるのです。
私のクライアントの社長さんに聞いたところ、ミャンマー人の整備士の方は、日本語はとても上手で仕事に支障をきたすことはほとんど無かったそうです。こういった優秀な方もいるのは紛れもない事実です。
ただし、まだまだお客様の中には、外国人が自動車整備していることに不安を感じているケースもあります。
特に地方などでは敬遠されることもあるようです。
なので、外国人整備士の人に接客はやらせていないということも言っていました。
技術を身につけたら帰国してしまう可能性もあります
外国人整備士の多くは、「日本でスキルを学び、母国に戻って起業・転職したい」と考えています。
これは決して悪いことではありませんが、企業側からすればせっかく育てた人材が短期間で離職してしまうという大きな損失です。
特に技能実習制度では、最長5年で実習を終え母国へ帰ることが前提とされています。
特定技能制度であっても、本人の希望や制度上の制限により継続雇用が難しい場合があります。
また、特定技能2号で永住権を獲得できたとしても母国の家庭の都合などでいきなりやめて帰国してしまうこともあります。
その結果、「ようやく一人前に育ってきた」と感じた頃に退職され、また新しい人材を探して最初から教育し直す、という非効率なサイクルに陥ってしまう可能性もあります。
社内の受け入れ体制が整っていないと現場は混乱してしまいます
外国人整備士の採用には、単なる雇用契約だけでなく、社内全体での受け入れ体制の構築が不可欠です。
例えば、以下のような支援が求められます。
- 日本語教育や通訳サポート
- 住居や生活面のサポート
- 宗教や食習慣への配慮
- メンタルケアや定期的な面談
これらを誰がどのように担当するのか明確にしておかないと、外国人本人だけでなく、既存の社員もストレスや戸惑いを抱え、現場の雰囲気が悪化する恐れがあります。
特に、少人数で運営されている中小整備工場では、1人の外国人スタッフに手が取られすぎてしまい、本来の業務に支障が出ることさえあります。
「人手不足の解消」だけを目的にした採用は失敗する
最大の問題は、「人手不足さえ解消できればいい」という短絡的な発想で外国人採用に踏み切ってしまうケースが多いことです。
しかし、外国人自動車整備士の採用はあくまで「戦略的な投資」であるべきで、社内体制や長期的なビジョンなしに行えば、むしろマイナスに働く可能性が高いのです。
実際に、「採用後のトラブルで現場が混乱し、最終的には契約解除」「離職後のフォローが不十分で法的トラブルに発展」などの事例も報告されています。
ですので、まずは社内体制と受け入れ覚悟を整えてから検討することが必要です。
外国人整備士の採用には確かにメリットもありますが、それ以上に受け入れ側の準備と覚悟が問われる取り組みです。
中小企業がその体制を持たないまま、安易に「即戦力」や「安価な労働力」として期待してしまうと、後に大きな後悔を招く可能性があります。
まずは、現場に必要な支援体制を見直し、社内で受け入れの意義と目的を明確に共有すること。
そして、自社にとって本当に必要な人材かどうかを中長期的な視点で見極めたうえで採用を検討することが重要です。
中小企業の自動車整備士の採用は、考え方や視点を変えて取り組むことでコストをかけすぎずに本当に欲しい人材を採用することができます。
もし、整備士不足にお困りでしたらまずはお気軽にご相談ください。
一緒に考えていきましょう!
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。