「また値引き交渉ですか…」
商談の最後に必ず来る値引き要求。少しでも高く売りたい営業担当と、少しでも安く買いたいお客様。この攻防の末に成約したとしても、薄すぎる利益に溜息をつくことになります。
「どうして車は価格でしか評価されないのだろう」 「こんなに整備に時間をかけ、アフターフォローも充実させているのに…」 「このままでは経営が続けられない」
あなたは、こんな思いを抱えながら日々の経営に取り組んでいませんか?
実は、多くの車屋経営者が同じ悩みを抱えています。しかし、中には価格競争に巻き込まれず、適正価格で販売し、高い利益率を維持している車屋も確かに存在するのです。
今回は、中古車販売業界で長年悩まされている「安売り競争」から脱却し、適正価格で販売しながら利益率を高める具体的な方法についてお話しします。
安売り競争の罠
多くの車屋が陥りがちな状況があります。それは「価格の安さだけで勝負する」という罠です。確かに一時的には客足が増えるかもしれませんが、この戦略には致命的な問題があります。
- 薄利多売の限界:利益率が低すぎると、販売台数をいくら増やしても経営は苦しくなる
- 価格だけで選ぶ顧客層:価格だけで判断する顧客は、次も同様に最安値を求めてライバル店へ流れる
- サービスの質の低下:薄利経営では車の質が下がるだけではなくて、十分な人材投資やサービス向上の余裕もなくなる
業界全体を「安売り」に導く仕組み
実は、業界の主要プレイヤーがこの「安売り競争」を助長していることに気づいていますか?
カーセンサーやグーネットなどの大手ポータルサイト、大手コンサルティング会社の集客指導、新車リースのフランチャイズ加盟プログラム—これらすべてに共通しているのは「価格の安さ」をアピールすることが最大の集客策だという思想です。
ポータルサイトでは価格が最も目立つ検索条件となり、価格順で並び替えられるため、少しでも安く表示しないと検索上位に表示されません。
大手コンサル会社の集客指導も「競合より1万円でも安く」という価格競争を促すものが多く、新車リースのFCモデルにいたっては「月々1万円で乗れる!」という価格メリットだけが強調されています。※新車リースの引っ掛け商法はホントたちが悪いですね。
このように、業界の仕組み自体が「価格の安さだけで勝負する」方向へと車屋を誘導しているのです。しかし、この流れに従っているかぎり、自動車販売業の未来は暗いと言わざるを得ません。
では、どのような経営が理想なのでしょうか?
- 適正価格で販売できる:安売りせず過度な値引きなしでも購入してもらえる
- 優良顧客が集まる:価格以外の価値を理解し、信頼関係を築ける顧客
- 高い成約率・リピート率:来店した見込み客の多くが購入し、次回も指名してくれる
- 適正な利益率:持続可能な経営と成長投資ができる利益を確保
変革のための3つの戦略
1. 「安さ」から「価値」へのシフト
価格競争から抜け出すには、お客様に価格以外の価値を伝える必要があります。
実践ポイント:
- 取り扱い車両の詳細な整備履歴を公開
- 保証内容を充実させ、アフターサービスを明確に提示
- 販売後のサポート体制を強化し、アピール
事例: A自動車販売店は価格競争から撤退し、「1年間の安心保証」と「第三者の車両鑑定書」を全車に付帯。結果、単価は5%上昇したにも関わらず、成約率は15%向上しました。
2. ターゲット顧客を明確にする
すべての人を顧客にしようとするから、価格競争に巻き込まれます。特定のニーズを持つ顧客層に特化しましょう。
実践ポイント:
- 自店の強みを活かせる顧客層を特定(例:ファミリー層、アウトドア愛好家など)
- その層に特化した車種の品揃えを強化
- ターゲット層向けの特別サービスを開発
事例: Bオートはファミリー層に特化し、コミコミ100万円で乗れるミニバンの品揃えを強化。「内外装の仕上げ」を徹底的に行い「充実の1年保証」を全車に付帯、客単価が25%向上し、SNSでの口コミも増加しました。
3. 情報発信による信頼構築
購入前から信頼関係を構築できれば、価格だけの判断から脱却できます。
実践ポイント:
- ブログやSNSでの専門知識の発信
- 動画コンテンツでの車両紹介や整備風景の公開
- 社長や社員の詳しいプロフィールをホームページで公開
事例: C自動車では社長自らが「中古車選びのポイント」を動画で解説。「正直な車屋」というブランディングに成功し、遠方からもお客様が訪れるようになりました。
実践のための第一歩
変革は一日では実現できません。まずは以下の3つからスタートしましょう。
- 自社の強みの再確認:お客様アンケートなどで、あなたの店の本当の強みを把握
- 理想の顧客像の明確化:どんなお客様と長期的な関係を築きたいかを具体的にイメージ
- 情報発信の開始:ブログやSNSで専門知識や店舗の取り組みを定期的に発信
まとめ
価格競争から脱却し、適正価格で販売できる車屋経営を実現するカギは、「価値の提供」と「信頼関係の構築」にあります。短期的な販売数字よりも、長期的な顧客関係を重視する経営へのシフトが、結果として高い利益率と持続可能な成長をもたらします。
最後までお読みいただきありがとうございました。この記事があなたの車屋経営の一助となれば幸いです。